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「積極的労働市場政策」とは、みたように、北欧諸国において充実した社会保障制度を維持するために、政府が手厚い職業訓練を提供することで、衰退産業から成長産業への労働者の移動を円滑に行うことを目指したものである。
ワンストップサービスの実施そうした積極的労働市場政策の推進にあたっては、雇用の地域性を勘案して、自治体レベルに権限を大幅に移譲することがポイントとなる。
より具体的には地域別に「産業・雇用創出委員会」を設置し、自治体・産業界・教育機関、労働組合等が連携する形で「地域別労働需給見通し」を行う。
この「労働需給見通し」に基づいて、カウンセリングから職業訓練・再就職支援・雇用保険給付までのワンストップサービスが実施され、就業可能な人材には原則再就職を実現する政策展開が目指されるべきである。
なお、このワンストップサービスの運営は基本的にはハローワークによる形となろうが、市場化テストの実施、官民コンソーシアムの活用等により、民間事業会社のノウハウ・人材を政策プログラムの実際の運営に積極的に取込むことが重要である。
この点では、米国の「ワンストップ・デリバリー・システム」が参考になる。
「ワンストップ・デリバリー・システム」とは、求人求職情報、ジョブマッチング、生活費支援、職業訓練等を統合してパッケージとして提供するプログラムのことであり、「ワンストップ・ソリューション」と呼ばれる、顧客が必要なサービスが一箇所で提供される民間企業の総合的な顧客サービスの考え方を適用したものである。
「ワンストップセンター」がこのシステムの中心となっており、そこには求職者・求人企業のために「リソース・ルーム」があり、公共図書館のように情報、書籍、パンフレット、ビデオが提供されている。
求職者はこれらの部屋をジョブサーチのためのいわば「事務所」のように使うことができ、ワンストップセンターのスタッフが求職者を援助してくれる。
ワンストップセンターで提供されるサービスは「コア・サービス」「インテンシブ・サービス」「トレーニング・サービス」の三段階に分かれている。
「コア・サービス」では職が得られない求職者が「インテンシブ・サービス」を受けることができ、最もコストのかかる「トレーニング・サービス」は「インテンシブ・サービス」でも職が得られない場合に受けることができるというように、効率的な運営がなされている。
「ワンストップ・デリバリー・システム」の運営・監視は「地域労働力投資委員会」が行う。
これは、州知事が決めた「地域労働力投資エリア」ごとに、産業界の代表、教育機関、労働団体、地方団体等がメンバーとなって設置されたものであり、ワンストップセンターの事務局となるワンストップ・オペレーターを指名する。
ワンストップ・オペレーターは、公的機関か民間機関を競合させる「マーケット・モデル」、あるいは三つ以上の主体がジョイントする「コンソーシアム・モデル」のいずれかの方式となっており、競争原理を働かせることで、求人・求職者双方のニーズにあったサービス提供が行われる体制が構築されている。
「日本版コミュニティーカレッジ」の創設こうした積極的労働市場政策の展開において、職業訓練のハブとしての役割を担う機関として「日本版コミュニティーカレッジ」の創設が求められる。
大学の大衆化は、大卒=企業エリートという構図を崩壊させた。
この結果、学歴にかかわらず自らの適性や意欲に応じてキャリアを切開いていくことが求められる時代となった。
生涯を通じてキャリアを開発していくことを支援することが、高等教育機関に求められる新しい役割となっているのである。
その意味で、産業界のニーズを積極的に取り入れることで、実践的な職業能力の開発につながる教育サービスを行っている、米国のコミュニティー・カレッジが参考になる。
コミュニティー・カレッジは'州や地域の基金により設立された二年制の高等教育機関で、準学士号の取得過程(準学士になれば四年制大学の三年次への編入が可能)の他、職業資格の取得や地元企業の要請に応じた職業訓練を提供している。
職業訓練のカリキュラムは地域の企業と連携を取りながら設定され、ティーチングスタッフには企業の現役ビジネスマンがパートタイムで雇われることも多い。
入学に際しての年齢制限や入学基準がさほど厳しくなく、授業料も安価であり、職業能力を高めようとする人々に広門戸が開かれている(村田・杉浦[一九九九]、内閣府『平成1八年版国民生活自書』)。
全米で1二〇二校、学生の平均年齢は二九歳、二二~三九歳が四二%、四〇歳以上が一六%を占める(全米コミュニティー・カレッジ協会ホームページ)。
「あらゆる人材育成のハブであり、人生のやり直しの機会が得られる所」(黒揮[一九九九])と捉えられており、この制度をわが国に導入することで、フリーターや失職者が新しいキャリアを形成していく際のスタートアップを支援する機関としても役割が期待される。
「若年キャリア自立支援プログラム」の大規模な実施さらに、若年就労を巡る環境の変化を勘案すれば、非正規雇用による能力開発機会の不足や離職によるキャリアの中断というハードルを越えて、若年層が着実な能力開発を行うことのできる環境作りが求められている。
その対象は一三~三五歳の若者とし、①現在就学中の若者、②卒業後正社員の職が得られた若者、③就学を終えたが(中退を含む)正社員の職を得られていない若者、の三つのタイプごとに、「キャリア教育」「能力開発手帳制度」「能力認定資格制度(日本版」>a)」(必要に応じて「教育訓練」も)を有機的に連携させた「若者キャリア自立支援プログラム」の大規模な実施を提案したい。
まず、就学中の若者に対しては中学・高校・大学の各段階で「キャリア教育」を実施する。
さらに、国が学校教育を終えた若者に対して「能力開発手帳」⑧を交付し、これに能力開発計画と職歴・実績を記録していくことを奨励する。
そして、この「能力開発手帳」に能力開発計画と毎年の仕事内容・実績を個人が記録していくことに勤め先が協力することを義務付ける。
すでに正社員として就業中の若者に対しては、勤務先事業所を通じてこれを配布するものとする。
就学を終えたが正社員の職を得られていない若者については、とわけ手厚い対応が求められよう。
これは、九〇年代の新卒採用激減の結果として〝フリーターの中年化″が進んでいることで、十分な能力開発機会を得ることのできない若者(あるいはクかつて若者であった者″)が多く存在するという現実があるからである。
ハローワーク、ジョブカフェ(二〇〇三年から設置が始まった「若年者のためのワンストップサービスセンター」)等で「能力開発手帳」を交付すると同時に、キャリア・カウンセラーを増強して希望者全員にカウンセリング、キャリア教育を行うものとする。
さらに、地域別に設置された「産業・雇用創出委員会」が策定する「地域別労働需給見通し」に基づいたキャリア・カウンセラーの助言により、必要な職業訓練を「能力開発バウチャー」による資金援助により受けることができるものとする。
⑧同様の提案として、社会経済生産性本部・雇用政策特別委員会の提言三〇〇四年三月)において「キャリア・パスポート」制度が参考になる。
これは、自らのキャリアに関する記録帳と様々な支援策の利用証という機能を持ち、一八歳以上の全ての若者に発行し、三〇~三五歳までを有効期間とする、というもの。

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